積立NISAの創設とNISAの改善

金融庁ウェブサイト
http://www.fsa.go.jp/news/28/sonota/20160831-3.html
税制改正要望
007NISA

・現行税制
上場株式や株式投資信託の配当金や売却益には、所得税(復興税含む)15.315%と住民税5%の合計20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で購入した年間120万円分については、投資した年から5年間は配当金や売却益に税金はかかりません。平成35年まで毎年120万円の非課税投資枠があり、配当金や売却益、つまり儲け(利益)が出るのであれば利用しない手はないように思います。しかし、投資というのは、利益にも損失にも振れる幅(リスク)があります。にも関わらず、損失が出た場合の事が考えられていない制度です。通常、上場株式で損失が出た場合、3年間、損失を繰り越すことができ、ほかに利益が出た株式や配当金と合算して税金を計算することが出来る(損失と利益が相殺されるので税金が安くなる。)のですが、NISAで投資した株式の損失は、なかったものとして扱われてしまうため、他の利益と合算して税金計算されることはありません。株式投資では、よく損切りが大事だと言われます。損切りは、損失が大きくならないようにさっさと株を売却し損失を確定させる行為です。5年間のうち、いつでも売却はして良いのですが、NISAで含み損を抱えてしまうと売却しても損失はなかったものとされてしまうため、投資判断を誤りずるずると保有してしまうことになりかねません。また、非課税期間が終わった後、一般口座に含み損がなかったものとして株式が移管されます。つまり、その株式の取得価額は、期間が終わった時点の株価になります。利益にも損失にも振れるのに、なぜか利益が出る前提の制度です。
008NISA
この例だと、NISA口座の利益分、112,312円の税金を納めなくて良いですが、NISA口座の含み損が大きいです。もし、仮にNISA口座の株式を売却し一般口座の利益と相殺することが出来れば、118,876円の税金は納めなくて済みます。NISA口座での損失はなかったものとみなされるので、118,876円多く納税したという言い方も出来ます。今回のケースだとわざわざNISA口座で株を買わなかった方が良かったね…という結果になってしまいました。あくまで結果論ですが。

・税制改正要望
まず、現行のNISAの改善として、非課税期間が終わったあとの株式の取得価額は、NISA口座で購入した時の取得価額になります。非課税期間が終わるまで、保有していれば他の株式の利益や配当金と相殺できるになるということです。
また、積立NISAの新設は、非課税投資枠は60万円だけど、そのぶん非課税期間が20年という長めの設定で、定期・定額で積み立てていくことに限定した制度であり、既存のNISAとの選択になります。

株式投資を促進したい割には、いずれも微妙な気がします。現行のNISAの改善ですが、例で示した通り、途中売却時の損失を認めてもらえないと株を塩漬けに状態にしてしまい、結果、損失が過大に膨らませて、株式市場から退場してしまうことになりかねません。非課税期間が終わった後に相殺できると保有し続け傷口を余計広げてしまいそうです。
また、積立NISAですが、対象範囲が拡大した確定拠出年金を利用した方が良いように思います。いずれにしても、積立NISA、確定拠出年金、生命保険(個人年金保険)など、今使えるお金を棚上げして長期間、自由に使えなくなるのはどうなのかなぁと思います。積立NISAは自由売却が可能ではありそうですが、投資商品がファンドなどだと手数料で結局…しかし、流動性は確保されているので、確定拠出年金や生命保険などよりはメリットはありそうです。ついつい非課税期間があるからということで誤った投資判断には気を付けたいものです。