事業承継税制の見直し

経済産業省ウェブサイト
http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2017/index.html
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・現行税制
中小企業の後継者が、承継する株式の2/3まで、相続税の80%、贈与税の全額をしばらく納めないで猶予される制度です。「納税猶予」であり、「免除」ではないので、将来、税額を納めることになります。しかし、この制度が続く限りは、継続的に納税猶予が見込めることになります。長期間にわたり納税猶予を受け続けることが出来るため、適用要件と継続要件が多くあります。平成21年から導入され、毎年のように改正がある本制度ですが、平成27年の改正により、適用要件、継続要件が緩和され利用しやすくなりました。
平成27年改正後の「贈与税の納税猶予」の主な要件は、
①後継者要件(受贈者)・・・会社の代表権を有し、役員等の就任から3年以上を経過していること。
②先代経営者要件(贈与者)・・・会社の代表権を有していたが、贈与の時には、代表権をもっていないこと。
③会社要件・・・中小企業者に該当し、金融商品などに投資をして利益を得る会社でないこと。
この、①~③の要件などを満たしていることを経済産業局に証明し、認定を受ける必要があります。これが主な適用要件になります。
その後、納税猶予を継続的に受けていくために満たなさければいけない主な要件は、
①後継者要件・・・後継者が引き続き代表者であること。
②雇用要件・・・従業員数(雇用)が納税猶予の適用したときから8割以上を5年間平均で維持できていること。
③会社要件・・・適用要件の③会社要件を引き続き満たしていること。
この①~③の要件などを満たしていることを経済産業局に証明するため、届出書を提出する必要があります。これが主な継続要件になります。
平成27年の改正までは、適用要件の①後継者要件には、親族に限定していたり、②先代経営者要件には、代表権のみならず、役員も退任しなければならないなど適用が困難でした。また、継続要件の②雇用要件については、5年間のうちに一度でも従業員数が8割を下回ってしまうと納税猶予が継続できなくなってしまうような状況でした。この部分の緩和があり、徐々に使いやすい制度になりつつあります。

・税制改正要望
継続要件の②雇用要件を更に緩和する。贈与税の納税猶予から相続税の納税猶予への切り替えの手続きの負担などの見直し。

人件費は、売上がゼロでも発生するので経営上の一番の悩みになります。経営判断を下すにあたって、この制度によって経営判断を誤らさせる一因となることは大いにあります。そのため、この納税猶予の制度を適用するにあたって5年間も人件費の采配が拘束されるリスクからなかなか適用することを躊躇うことにつながっています。また、平成27年度改正後も要件は緩和されたとはいえ従業員数の少ない中小企業は1人減るだけでも8割維持に大きな影響を及ぼしかねないので、この制度を利用するのをやめる中小企業もまだまだあります。取引相場のない株式の相続税評価額の見直しにより、評価額自体が下がることを期待したいのですが、難しい面もあるので、雇用要件のさらなる緩和を期待したいところです。