税制改正大綱2021-退職所得-従業員が対象
2020年12月10日 税制改正大綱が発表されました。
自民党:https://www.jimin.jp/news/policy/200955.html
目を通すのには時間がかかるので、少しずつ気になるところをチェックしていこうと思います。
退職所得課税について、勤続年数が5年以下の従業員に対しても、退職所得計算について、制限を受けることになりました。
◎勤続年数5年以下の役員等でない者(従業員)の退職金について、収入金額から退職所等控除を控除した残額のうち、300万円を超える部分について、1/2課税が廃止される方向になっています(令和4年以後の所得税について適用予定)。
退職所得課税について、おさらい。
退職所得は、ほかの所得と比べ、税の優遇を受けている所得です。なので、個人事業主については、小規模企業共済に加入して、節税、という話をよく聞くと思います。
退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。
(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額
退職所得控除が存在し、なおかつ、1/2されるというかなりお得な設計になっています。
ほかの所得、給与所得は、
(収入金額-給与所得控除)=給与所得の金額
事業所得は、
(収入金額-必要経費)=事業所得の金額
1/2計算するのは、給与所得や事業所得にはない特徴です。
収入からマイナスをすることができるものは、給与所得や退職所得にも存在しますが、退職所得控除は、控除額も結構大きいです。勤続年数(小規模企業共済の場合は、掛け始めてから)1年ごとに40万円ずつ控除額が増え、20年超になると控除額が毎年70万円ずつ増えます。
例えば、勤続年数が30年の人の場合の退職所得控除額はいくらになるかというと、
40万円×20年+70万円×10年=1,500万円
退職金が2,000万円だったとしたら、
(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円が退職所得となります。退職所得控除後の1/2もかなり強力です。
これだけでは、終わりません。さらに、退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。
所得税は累進課税制度を採用していますので、給与所得、事業所得など他の所得が多ければ、通常、他の所得とも合算して所得税が計算されることになりますので、高い税率で計算される部分が多くなる可能性があります。
しかし、退職所得は「分離して」となるので、他の所得と分けて所得税を計算されるため、累進課税の影響が軽減されることになります。
給与所得と比べると税の優遇がかなりされるので、退職所得で…と考える人は多いでしょう。
そこで、短期的な利用を避けるために特定の役員等に関しては、上記の説明したような退職所得の計算を適用できないようしています。
役員等勤続年数が5年以下である人が支払を受ける退職金については、×1/2の計算を適用できないようになっています。
ここまでが、今までの制度です。これに加えて、勤続年数が5年以下の従業員に対しても×1/2の計算を適用できない部分が設けられました。
勤続年数が5年以下なら全部×1/2適用がなしとなる役員とは違って、収入金額から退職所得控除を控除した残額が300万円超の部分について、×1/2が適用できなくなります。
従業員が5年以下で結構な退職金をもらうケースは、なかなか見かけることはなさそうですが、上場企業などではあるということなのでしょう。
(まだ改正が決定した訳ではありません)