あれか、これか 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門【書籍】

お金の本当の価値に気づき、現金原理主義という人生最大の呪縛から自由になれるという意味では、ファイナンスほど実践的な学問は、存在しない。人は高い安いの判断を価格同士を比較して決定し、価値判断を誤ってしまう。どうやって、本当の価値を導き出すのか。
この本は、「価格と価値」に関するファイナンスの基本的な考え方、その価値を決定づけている「時間」「金利」「リスク」の基礎を学び、4つのファイナンス理論から本当の価値がなんたるかを学ぶ本です。
会計は、「取得原価主義」を基準です。「時価」など隠された価値を決算書は見逃してしまいます。ヒトやブランドなど無形資産は、貸借対照表にのっていません。「時価」を学ぶ機会は、ほとんどありません。非上場株式の自社株評価となると及び腰になることもあります。「時価評価」というと多くの税理士にとって苦手とするテーマです。もちろん、会計でも「時価評価」は、存在します。税務においても相続、贈与など資産税を中心に、「時価評価」が重要になってきます。通達などにも、マーケット・アプローチ(取引事例比例法)の考え方があったり、売却価格の算定の基礎に、コスト・アプローチ(原価法)という考え方などがあります。しかし、通達で算定する「価格」であり「価値」を見抜くものではありません。
マーケット・アプローチは、過去の売買事例であり、本当の値打ちはわかりません。コスト・アプローチ(原価法)は、過去の費用、実際に製品を作製するためにかかった費用を積み上げて、「価格」を算定しますが、過去の費用からは、本当の価値はわかりません。
最近の税務上の事例でも算定の根拠として採用されることが増えてきているのが、キャッシュフロー・アプローチです。モノの価値は、それが生み出すお金の量によって決まり、将来のキャッシュフローの総和を割引現在価値にし、いま、いくらの価値があるのか導き出します。「割引率」が重要であり、割引率=金利≒リスク(不確実性)です。本当の価値は、リスク(不確実性)の量を見極めることです。「価値」の考え方が学べて非常に勉強になる1冊でした。ファイナンス理論は、日常の選択にも役に立ちますし、自分の仕事にも役立ちそうなので、もう少し掘り下げて引き続き学んでいこうと思います。