領収書の上様
一般企業で経理として働いていた時に、経費の精算で添付する領収書の宛名が上様名義になっていることがありました。精算する人によって、自分名義だったり、会社名義だったりと様々でした。関与先の領収書でもこのようなケースがほとんどです。上様名義の領収書は、税務上問題ないのでしょうか。
法人税法上も所得税法上も相手方から受け取った領収書を保存しなければならないとされていますが、その領収書の記載内容までは、法律上、明記されていません。したがって、上様名義であっても問題はほとんど生じません。領収書は、代金の支払の証明となる書類であり、支払事実を証するものです。現金管理がずさんであれば問題になる可能性がありますが、その際にも、反面調査を行えば支払先から確認してもらうことが出来ます。仮装していたら当然アウトです。
法人税法と所得税法上は問題にはなりませんが、消費税法上には、領収書等の記載内容、要件が記載されています。以前にも仕訳(帳簿)に記載すべき事項として消費税法30条を説明しましたが、消費税法30条には、領収書等の記載事項についても要件が記載されています。(仕入税額控除の要件です。免税事業者であれば問題にはなりません。)
①書類の作成者の氏名又は名称
②取引を行った年月日
③取引に係る資産又は役務の内容
④取引の金額
⑤書類の交付を受ける者の氏名又は名称
この⑤の要件を上様では、法律上満たせないことになります。但し、今までの経験上、上様名義ということで問題になったことはありません。しかし、消費税法の法律上は、要件を満たしていないことになりますので、いちいち宛名をお願いするのが面倒ということをよく言われますが、上様名義で領収書を受け取ることは避け、きちんと会社名義で受け取るようにしましょう。
法人税法150条の2(個人は所得税法148条を参照)
普通法人、協同組合等並びに収益事業を行う公益法人等及び人格のない社団等(青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けているもの及び連結法人を除く。次項において「普通法人等」という。)は、財務省令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにその取引(恒久的施設を有する外国法人にあつては、第百三十八条第一項第一号(国内源泉所得)に規定する内部取引に該当するものを含む。以下この項において同じ。)を財務省令で定める簡易な方法により記録し、かつ、当該帳簿(当該取引に関して作成し、又は受領した書類及び決算に関して作成した書類で財務省令で定めるものを含む。次項において同じ。)を保存しなければならない。
法人税法施行規則67条(個人は所得税法63条を参照)
法第百五十条の二第一項(帳簿書類の備付け等)に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。
一 前条第一項に規定する取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
二 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類
消費税法30条9
一 事業者に対し課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この号において同じ。)を行う他の事業者(当該課税資産の譲渡等が卸売市場においてせり売又は入札の方法により行われるものその他の媒介又は取次ぎに係る業務を行う者を介して行われるものである場合には、当該媒介又は取次ぎに係る業務を行う者)が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書、納品書その他これらに類する書類で次に掲げる事項(当該課税資産の譲渡等が小売業その他の政令で定める事業に係るものである場合には、イからニまでに掲げる事項)が記載されているもの
イ 書類の作成者の氏名又は名称
ロ 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
ハ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
ニ 課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。)
ホ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称