仮想通貨の取得価額が不明な場合

 仮想通貨の取得価額(譲渡原価)の計算は、原則、移動平均法または総平均法(法定評価方法)により算出することになります。(所得税法48条の2)
 しかし、仮想通貨の取得することになった理由が、ハードフォークや誰かからもらったなど、取得価額がわからない場合もあります。
 例えば、所得税法施行令第119条の6第2項の1。

 贈与、相続又は遺贈により取得した仮想通貨(法第四十条第一項第一号(棚卸資産の贈与等の場合の総収入金額算入)に掲げる贈与又は遺贈により取得したものを除く。)
 被相続人の死亡の時において、当該被相続人がその仮想通貨につきよるべきものとされていた評価の方法により評価した金額

を、取得価額にするとあります。相続の場合だと、亡くなった人(被相続人)の計算した結果を取得価額として引き継ぐということになりますが、取得価額がよくわからないというケースもあると思います。

 このように取得価額がわからない場合、取得原価はさすがに0というのもどうか、となり、所得税法基本通達48の2-4において、売却金額の5%は経費にしても良いとしています。

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 所得税法基本通達48-2-4
 仮想通貨を売買した場合における事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、法第37条第1項及び第48条の2の規定に基づいて計算した金額となるのであるが、仮想通貨の売買による収入金額の100分の5に相当する金額を仮想通貨の取得価額として事業所得の金額又は雑所得の金額を計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。(令元課個2-22、課法11-3、課審5-12追加)
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 この基本通達、取得価額がわからない場合だけでなく、移動平均法または総平均法で計算した金額と売却金額5%と比較して、有利な方を選択できるという解釈もできます。
 すなわち、仮想通貨が20倍を超える値上がりをすれば、余計な計算をせず売却金額に5%分を引くだけで計算が完了します。
 さらに言い換えるなら、税務署は、計算できないというなら、わからないから5%だけ経費にして計算を完了させてしまうということもあり得ます。この通達ができたのは、このような理由もあるのではないかと思います。
 実際に相続により取得した購入金額もわからないような土地は基本的には、この通達と同様のものがあり、売却金額の5%だけ引いて計算を完了させることがあります。先祖代々の土地だったりすると、5%分の経費の方が有利だったりすることもありますが。
 対象者が多い事項として、ハードフォークにより取得した分、売却金額の5%経費としてマイナスできるということを留意しておきましょう。

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所得税法 (仮想通貨の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)
第四十八条の二 居住者の仮想通貨(資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項(定義)に規定する仮想通貨をいう。以下この条において同じ。)につき第三十七条第一項(必要経費)の規定によりその者の事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となるその年十二月三十一日において有する仮想通貨の価額は、その者が仮想通貨について選定した評価の方法により評価した金額(評価の方法を選定しなかつた場合又は選定した評価の方法により評価しなかつた場合には、評価の方法のうち政令で定める方法により評価した金額)とする。

所得税法施行令 仮想通貨の取得価額)
第百十九条の六 第百十九条の二第一項(仮想通貨の評価の方法)の規定による仮想通貨の評価額の計算の基礎となる仮想通貨の取得価額は、別段の定めがあるものを除き、次の各号に掲げる仮想通貨の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 購入した仮想通貨
 その購入の代価(購入手数料その他その仮想通貨の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
二 前号に掲げる仮想通貨以外の仮想通貨
 その取得の時におけるその仮想通貨の取得のために通常要する価額
2 次の各号に掲げる仮想通貨の前項に規定する取得価額は、当該各号に定める金額とする。
一 贈与、相続又は遺贈により取得した仮想通貨(法第四十条第一項第一号(棚卸資産の贈与等の場合の総収入金額算入)に掲げる贈与又は遺贈により取得したものを除く。)
 被相続人の死亡の時において、当該被相続人がその仮想通貨につきよるべきものとされていた評価の方法により評価した金額
二 法第四十条第一項第二号に掲げる譲渡により取得した仮想通貨
 当該譲渡の対価の額と同号に定める金額との合計額