仮想通貨に係る会計上の取扱い・・・は、まだ当分でない?【BTC(暗号通貨)】
法人税法第22条第4項においては、課税所得の計算について、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算する旨定めています。
法人税法22条は、簡単に言うと、法人税法にすべての取扱いを記載できないので、記載していない事項については、企業会計原則、財務諸表規則、商法における計算規定など、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、計算してくださいという事です。
つまり、会計処理=税務処理は、一致することになります。
一方、所得税法36条、37条においては、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算するとは、条文上には、ありません。収入金額や必要経費に関する取扱いの多くが、通達に依拠していることが多々あります。所得税に関しては、商売で得られる(事業所得)以外にも、収入を得られる機会が多く存在するため、包括的な条文になっています。
従って、所得税法、法人税法ともに、仮想通貨に関する条文は、存在しません。
法人税法で、考えるならば、仮想通貨に関する条文が存在しないのであれば、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準、企業会計原則などに従って処理をする必要があります。
所得税法でも、会計処理の取扱いがでれば、しばらくは、会計処理の取扱いに従うことになると考えられます。
残念ながら、会計基準にも仮想通貨の会計処理に関する取扱いは存在していません。
しかし、2016年11月14日に日本公認会計士協会から、改正資金決済法が2017年に施行され、仮想通貨の利用拡大が想定、また、既に多くの企業が携わっていることなどを踏まえ、仮想通貨に係る会計上の取扱いの明確化を要望しています。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/standards_advisory/minutes/20161114/20161114_02.pdf
要望を受け、第350回(2016年12月2日)の企業会計基準委員会の審議事項として、仮想通貨が取り上げられました。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/minutes/20161202/20161202_05.pdf
第351回、352回では、審議されていないようです。
こんなんじゃ、個人ならまだしも、企業の立場からすると、怖くて扱えません。
・・・、平成28年分の所得税の確定申告まで(2月中)に、ちょっとは形になって欲しいのですが、無理な気がしてきました。
審議の中身を見る限りでは、現行の外貨、棚卸資産、無形固定資産、金融商品などの枠内で定義付けをしようと考えているようです。
現行の会計処理の取扱いで考えるならば、外貨の取扱いが近いかなと、最近、思います。
しかし、仮想通貨は、単なる決済システムに留まるものではなく、また、保有者、発行者など、それぞれ、目的が異なるため、1つの定義にあてはめるには、無理があります。
改正資金決済法の仮想通貨の定義に当てはまらない仮想通貨?(笑)をどうするのかなどもあります。
所得税法基本通達36-1では、「収入金額とすべき金額」は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わないとしています。
詐欺で儲けても、確定申告はしなければなりませんw
もちろん、仮想通貨の定義から外れる=詐欺ではありません。
仮想通貨の誕生で、金融革命が起きるという事が、会計処理の取扱い1つで実感してしまいます。
平成28年分の所得税の確定申告に向けて、取扱いを考えたかったのですが、ぐだぐだでまとまりませんでした。
税務署に問い合わせをして、処理するのが無難ですね、という結論です(逃げ)。
過去に、私の見解は記載してあります。参考に。
参考条文
・法人税法22条
(各事業年度の所得の金額の計算)
内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。
・所得税法36条、37条
(収入金額)
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。
3 無記名の公社債の利子、無記名の株式(無記名の公募公社債等運用投資信託以外の公社債等運用投資信託の受益証券及び無記名の社債的受益権に係る受益証券を含む。第百六十九条第二号(分離課税に係る所得税の課税標準)、第二百二十四条第一項及び第二項(利子、配当等の受領者の告知)並びに第二百二十五条第一項及び第二項(支払調書及び支払通知書)において「無記名株式等」という。)の剰余金の配当(第二十四条第一項(配当所得)に規定する剰余金の配当をいう。)又は無記名の貸付信託、投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益証券に係る収益の分配については、その年分の利子所得の金額又は配当所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、第一項の規定にかかわらず、その年において支払を受けた金額とする。
(必要経費)
その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
2 山林につきその年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その山林の植林費、取得に要した費用、管理費、伐採費その他その山林の育成又は譲渡に要した費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。