一時的に必要な仮想通貨を取得した場合の取り扱い

一時的なら個別法を採用

 平成31年度税制改正に伴い、仮想通貨の取り扱いが条文として明確化されたことにより、基本通達にも改正がありました。
 その中で特徴的な通達として、 所得税基本通達48の2-1(法人税法基本通達2-3-65も同様の内容) です。
 国税庁:法第48条の2《仮想通貨の譲渡原価等の計算及びその評価の方法》関係
  https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/08/04-2.htm

 例えば、BNBコインを購入しようとするとき、海外取引所を利用して、購入することになります。
 その過程において、JPY→BTC→BNBという流れで購入する形が一般的です。
 BTCを介入せずにJPY建て(若しくは外国通貨建て)で購入できるのであれば、
 ①BNB購入
 BNB 100 / JPY 100
となり、仮想通貨を売却していないので、損益計算は行われません。
 しかし、常にBTC建てやETH建てでしか他の仮想通貨を購入できない、JPY→BTC→BNBという流れで購入せざる負えないとすると、
 ①BTC購入
 BTC 100 / JPY 100
 ②BNB購入(BTC売却)
 BNB 100 / BTC 100
となり、BTCを購入し、BNBを購入したと同時にBTCを売却したという損益計算(課税関係)が発生することになります。
この例では、一時的な値上がり等もなく、売りも買いも同じ値段なので問題は生じませんが、仮に既に価格の低いBTCを保有していた場合、どうなるでしょうか?
通常、移動平均法または総平均法により、取得価額(譲渡原価)が計算されることになります。

例えば、既に1BTC原価10円で保有していた場合

①JPYでBTCを購入(時価1BTC100円)
 BTC 100 / JPY 100

②過去に取得したBTCと①で購入したBTCの移動平均法よる取得価額の計算

 (1BTC10円+1BTC100円)÷(1BTC+1BTC)=1BTC55円

③BTCでBNBを購入(時価1BTC100円)
 BNB 100 / BTC 55
       / BTC売却益 45

と、なってしまい、もともとBNBを追加で購入したいだけだったのにBTCを売却したとして、売却損益が計算され、確定申告をし、税金を納めなくてはならなくなってしまいます。
 しかし、目的は新たな資金でBNBを購入することです。なので、所得税基本通達48の2-1では、一時的にBTCを購入しなければならないような場合に不当な損益を発生させることがないように、既存の保有分とは別に「個別」に計算するとしています。
 個別に計算できれば、急激な変動がない限り、損益に与える影響は低く、仮に多少の変動であれば、損益を計上しなくても良いかと個人的には思います。
 総平均法の場合、国内取引所からの年間取引報告書を利用して計算するので、その際に個別の取り扱いについて留意しておかないと不当に損益を計上する結果にもなりかねません。もちろん、移動平均法で計算する方も個別法で計算するものを分けておくということを留意して処理を間違えないようにしましょう。

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(一時的に必要な仮想通貨を取得した場合の取扱い)
48の2-1 令第119条の2第2項に規定する一時的に必要な仮想通貨を取得する場合とは、仮想通貨を購入し、若しくは売却し、又は種類の異なる仮想通貨に交換しようとする際に、その仮想通貨(種類の異なる仮想通貨との交換にあっては、その有する仮想通貨又はその種類の異なる仮想通貨)がいずれの仮想通貨交換業者においても、本邦通貨及び外国通貨(以下この項において「本邦通貨等」という。)と直接交換することができないこと(種類の異なる仮想通貨との交換にあっては、その有する仮想通貨とその種類の異なる仮想通貨とが直接交換することができないことを含む。)から、本邦通貨等(種類の異なる仮想通貨との交換にあっては、その種類の異なる仮想通貨)と直接交換することが可能な他の仮想通貨を介在して取引を行うため、一時的に当該他の仮想通貨を有することが必要となる場合をいうことに留意する。
 この場合において、一時的に必要な仮想通貨の譲渡原価の計算における取得価額は、個別法(当該仮想通貨について、その個々の取得価額をその取得価額とする方法をいう。)により算出することに留意する。(令元課個2-22、課法11-3、課審5-12追加)
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所得税法施行令 119条の2第2項
(仮想通貨の評価の方法)
第百十九条の二 法第四十八条の二第一項(仮想通貨の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)の規定によるその年十二月三十一日(同項の居住者が年の中途において死亡し、又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時。第二号において同じ。)において有する同項に規定する仮想通貨(以下この項において「期末仮想通貨」という。)の評価額の計算上選定をすることができる評価の方法は、期末仮想通貨につき次に掲げる方法のうちいずれかの方法によつてその取得価額を算出し、その算出した取得価額をもつて当該期末仮想通貨の評価額とする方法とする。

一 総平均法(仮想通貨(法第四十八条の二第一項に規定する仮想通貨をいう。以下この款において同じ。)をその種類の異なるごとに区別し、その種類の同じものについて、その年一月一日において有していた種類を同じくする仮想通貨の取得価額の総額とその年中に取得をした種類を同じくする仮想通貨の取得価額の総額との合計額をこれらの仮想通貨の総数量で除して計算した価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいう。)

二 移動平均法(仮想通貨をその種類の異なるごとに区別し、その種類の同じものについて、当初の一単位当たりの取得価額が、再び種類を同じくする仮想通貨の取得をした場合にはその取得の時において有する当該仮想通貨とその取得をした仮想通貨との数量及び取得価額を基礎として算出した平均単価によつて改定されたものとみなし、以後種類を同じくする仮想通貨の取得をする都度同様の方法により一単位当たりの取得価額が改定されたものとみなし、その年十二月三十一日から最も近い日において改定されたものとみなされた一単位当たりの取得価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいう。)

2 前項各号に規定する取得には、仮想通貨を購入し、若しくは売却し、又は種類の異なる仮想通貨に交換しようとする際に一時的に必要なこれらの仮想通貨以外の仮想通貨を取得する場合におけるその取得を含まないものとする。