ビットプレスに書いた仮想通貨の移動平均法と総平均法について①

サボって、久しぶり。

先日、夜な夜な書いたBitpress掲載 第11回「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」
https://bitpress.jp/column/maruyama/entry-6978.html

ここで、ちょっと余計なこともちょろっと書いたのですが、その事について、個人的な見解(もちろん、コラムの方も個人的な見解を含みますw)を書いておこうと思います。予防です。

この部分、載せておかなければ良かったなぁ~と。
この計算は、売却の都度、損益を計算するという前提です。
これを繰り返し行えば、計算の仕組み上、やり方によっては、損失にしてしまうことも可能です。

しかし、意図的に、そのようなことをした場合、「取得価額の計算上発生する1円未満の端数は、切り上げして差し支えありません。」とありますが、認められない(適切な計算をしていないとして課税される)と考えています。

そもそもとして、移動平均法や総平均法の法律上に則った計算は、売却どの都度、損益を計算するのではなく、総購入金額(前年の繰越残高がある場合は繰越残高を含む)から年末の残高をマイナスして、売却金額に対応する経費(売上原価)を算出します。
つまり、取得価額の計算は、年末の残高を計算するために用いられます。

所得税法37条の1項、総収入金額に対応する売上原価=雑所得の必要経費です。
総収入金額というのが、主に仮想通貨の売却金額です。それに対応する売上原価というのが売却金額からマイナスすることができる必要経費です。

この売上原価を計算する根拠条文ですが、
所得税法47条
「必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となるその年十二月三十一日において有する棚卸資産の価額…」
所得税法48条
「必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となるその年十二月三十一日において有する有価証券の価額…」
とあるように、「12/31時点の残高を計算」するために移動平均法、総平均法という計算方法が用いられています。

つまり、根拠条文から考えれば、最後の12/31時点の残高を計算する時の取得価額を1円未満の端数は、切り上げても良いという話になります。

なので、図の通り、移動平均法だと、期中に移動平均で価格を計算してきた結果、年末残=108円×5個で、期末の取得価額540円を計算します(ここが1円未満の端数は切り上げしても差し支えありませんの部分)。
今年の購入金額2,350円(去年から始めた人は、前年の繰越残高も含めて計算します。)から先ほどの期末の取得価額540円をマイナスすることで、必要経費1,810円を求めます。

従って、売却金額に対応する取得価額を都度計算し、意図的に損失を生み出したとしても、認めれられないというリスクは非常に高いのではないかと考えられます。

その理屈からすれば、例の株のやつだってダメじゃんということになるのですが、譲渡所得の対象となる個人の株式については、所得税法施行令118条に定めらている「総平均法に準ずる方法」で計算しているため、OKということになります。
所得税法施行令118条
「譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該有価証券を最初に取得した時(その後既に当該有価証券の譲渡をしている場合には、直前の譲渡の時。以下この項において同じ。)から当該譲渡の時までの期間を基礎」
というように、総平均法に準ずる方法では、12/31時点の残高ではなく、「譲渡の時」の時点で計算するため、ボロ株ほにゃららが出来る事になります。

なので、コラムに記載した計算方法は、どちらかと言えば「総平均法に準ずる方法」です。
Q&Aで、「移動平均法を用いるのが相当です(ただし、継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えありません。)。」とあるように「相当」とあるので、移動平均法<総平均法に準ずる方法の方が有利になるだろうということ、感覚的に理解しやすいだろうということでコラムの方に書きました(Q&Aもそういう書き方なので)。
意図的ではない限りは、売却の都度、それに対応する原価を計算しても問題ないという範囲、「相当」だと思っています。

といった状況を踏まえれば、「取得価額の計算上発生する1円未満の端数は、切り上げして差し支えありません。」を用いた意図的な損失計上は、やはり認められない可能性が高いのではないのかというのが結論になります。

難しくなってしまいましたが、そんな話でした。

②は、移動平均法と総平均法どちらが有利なの?ってのを、書く気力があったら書きます。

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所得税法37条 抜粋
1 必要経費に算入できる金額
 事業所得、不動産所得及び雑所得の金額を計算する上で、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。
(1) 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2) その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

所得税法47条
(棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法)
第四十七条 居住者の棚卸資産につき第三十七条第一項(必要経費)の規定によりその者の事業所得の金額の計算上必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となるその年十二月三十一日(その者が年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時。以下この条から第五十条までにおいて同じ。)において有する棚卸資産(以下この項において「期末棚卸資産」という。)の価額は、棚卸資産の取得価額の平均額をもつてその年十二月三十一日において有する棚卸資産の評価額とする方法その他の政令で定める評価の方法のうちからその者が当該期末棚卸資産について選定した評価の方法により評価した金額(評価の方法を選定しなかつた場合又は選定した評価の方法により評価しなかつた場合には、評価の方法のうち政令で定める方法により評価した金額)とする。
2 前項の選定をすることができる評価の方法の特例、評価の方法の選定の手続、棚卸資産の評価額の計算の基礎となる棚卸資産の取得価額その他棚卸資産の評価に関し必要な事項は、政令で定める。

所得税法48条
(有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)
第四十八条 居住者の有価証券につき第三十七条第一項(必要経費)の規定によりその者の事業所得の金額の計算上必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となるその年十二月三十一日において有する有価証券の価額は、その者が有価証券について選定した評価の方法により評価した金額(評価の方法を選定しなかつた場合又は選定した評価の方法により評価しなかつた場合には、評価の方法のうち政令で定める方法により評価した金額)とする。
2 前項の選定をすることができる評価の方法の種類、その選定の手続その他有価証券の評価に関し必要な事項は、政令で定める。
3 居住者が二回以上にわたつて取得した同一銘柄の有価証券につき第三十七条第一項の規定によりその者の雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額又は第三十八条第一項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)の規定によりその者の譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、政令で定めるところにより、それぞれの取得に要した金額を基礎として第一項の規定に準じて評価した金額とする。

所得税法施行令118条
(譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等)
第一一八条 居住者が法第四十八条第三項(譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等の計算)に規定する二回以上にわたつて取得した同一銘柄の有価証券で雑所得又は譲渡所得の基因となるものを譲渡した場合には、その譲渡につき法第三十七条第一項(必要経費)の規定によりその者のその譲渡の日の属する年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額又は法第三十八条第一項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)の規定によりその者の当該年分の譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該有価証券を最初に取得した時(その後既に当該有価証券の譲渡をしている場合には、直前の譲渡の時。以下この項において同じ。)から当該譲渡の時までの期間を基礎として、当該最初に取得した時において有していた当該有価証券及び当該期間内に取得した当該有価証券につき第百五条第一項第一号(総平均法)に掲げる総平均法に準ずる方法によつて算出した一単位当たりの金額により計算した金額とする。
2 第百九条から前条までの規定は、前項に規定する所得の基因となる有価証券について準用する。

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